食事と腸活で 健康長寿へ 内藤教授と考える「腸活」

食物繊維や植物性たんぱく質が大切

 腸の健康に取り組む「腸活」や食など多様な視点から健康長寿を考える国際会議(第1回世界長寿サミット)が開かれました。運営に携わった京都府立医科大学大学院の内藤裕二教授(生体免疫栄養学)が注目点を解説。あわせてReライフ会員コミュニティー「読者会議」のメンバーの「腸活で知りたいこと」に答えました。
―長寿サミットで注目されたテーマは。
 「生物学的年齢」ですね。歳月で数える「暦年齢」に対し、「生物学的年齢」はDNA解析などで老化のペースを測る。この年齢は暦年齢が同じ人でも異なるし、臓器別に異なるという研究も報告されました。
世界の医学界では老化を「予防や治療ができる病」とみる考え方に変わってきていて、「若返りも可能」という考えにつながります。

―サミットの成果から暮らしのアドバイスを。
 発表した「世界長寿サミット宣言」(表)では、食物繊維や植物性たんぱく質の大切さを挙げました。食物繊維は腸内細菌のエサになるので毎日摂取する必要があります。私たちの研究チームは京都府京丹後市で健康な高齢者の腸内細菌叢(そう)を調査。豆類、根菜、海藻など食物繊維の多い食材をよく食べ、短鎖脂肪酸の一つの酪酸を産生する菌が腸内に多いことなどを発表しました。短鎖脂肪酸は全身の健康に免疫などで重要な働きをしています。植物性たんぱく質とは豆腐や納豆、豆乳などの大豆類。米や小麦でもとれます。アメリカの大規模追跡調査では「心身とも健康な高齢者の食生活はプラントベース(植物性食品中心)が基本だった」ことが明らかにされています。

―絆やコミュニケーションも長寿に影響と。
コミュニケーションは食事のあり方でも重要なので、世界各国の幸福度をめぐる国連機関の「ワールドハピネスリポート2025年版」で注目したのは、「昼食と夕食を1週間に何回、だれかと一緒に食べますか―」という設問。14回のうち日本は3.7回と、世界133位。「孤食」に偏りすぎです。「食」を通じて絆やコミュニケーションを育むことも長寿につながります。

京丹後市の健康な高齢者は食事以外でも、「農作業を続けるなど運動量が多い」「人づきあいや社会活動に費やす時間も比較的長い」といった特徴が明らかになりました。

根菜・豆類・全粒粉を 主食は「茶色」に

読者会議メンバーが質問

―「腸内環境を示すサインはありますか」(60代男性)

 腸内環境の良しあしの指標に便の形状があります。色や形、硬さ、においなど。バナナのような便が理想的です。回数は週に2、3回しか出なくても大丈夫。排便困難感があるかどうかが大事です。おなかが張るとか痛いとかがないのも大切。腸内環境の悪化による場合があるからです。

―「食物繊維はどれくらいの量をとればいいですか」(50代女性)

WHO(世界保健機関)は1日25gを推奨していますが、これは最低ラインです。野菜の摂取量で厚労省は1日350gを推奨していますが、日本では達成できていない人が多いようです。

食物繊維は野菜サラダだけでは不十分。根菜類や豆類、全粒粉などを毎日の食事でとるのが効果的です。主食は白(白米、白パン)ではなく茶色(玄米、麦飯、全粒粉パン)にしましょう。京丹後市でよく食べられている食材の「ま・ご・わ・や・さ・し・い」が参考になります(図)。

ー「発酵性食物繊維とは何ですか」(80代女性)

 腸内細菌は食物繊維を使って体に良い物質をつくる「発酵」を行う。その際に腸内細菌が利用しやすい食物繊維のことです。多くの食材には発酵性と非発酵性の食物繊維の両方が含まれます。発酵性食物繊維が多いのは、穀類、豆類、野菜、きのこ、海藻などです。キムチなどの「発酵食品」とは別のものです。

―「ヨーグルトの選び方は」(50代女性)

 特定のビフィズス菌が入っている機能性表示食品など、さまざまな商品があります。菌の種類によって機能が異なるので、パッケージを見て、自分の目的、体調に合うものを選ぶとよいでしょう。

―「腸活と睡眠の関係は」(40代女性)

 私たちが進めている大規模調査では、食物繊維の摂取量が多い人は、睡眠の質が良くなるというデータが出つつあります。重要な研究分野になっていくと思います。

第1回世界長寿サミット

 健康長寿をテーマに、日本など12カ国(ビデオ参加含む)の医師、研究者ら約150人が医療、科学、食、社会などの分野で議論した。京都府立医科大学と京丹後市など丹後地域の自治体による実行委員会主催で、6月中旬に開催。会場の京丹後市は100歳以上の「百寿者」の人口10万人あたり比率が全国平均の3倍超の長寿地域。

2025年9月27日(土)朝日新聞朝刊13版 Reライフ人生充実PROJECT

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