人生相談「嫌なこと言われたときに落ち込む」精神科医・作家 和田秀樹

悩み・質問

家族や同僚から嫌なことを言われたときに、過剰に落ち込んでしまいます。その言葉を自分の頭の中で何度も繰り返してしまいます。言った人に悪意がない場合もありますし、自分としては気にせず過ごしていきたいのですが、どうしても気になってしまいます。どうすれば気を取り直して機嫌よくいられるでしょうか?(60代・女性)

受け止め方変える思考してみて

回答

よくストレスという言葉を耳にするでしょうが、実は嫌な上司であれ、つらい職場であれストレスではなく、それらは「ストレスを与えるもの=ストレッサー」と呼ばれます。このストレッサーによる心のゆがみをストレスと呼びます。嫌な上司が職場にいても平気な人もいるし、心を病んでしまう人もいるのは、人によってストレッサーに対する受け止め方が違うからです。

最近の精神医学でトレンディーな認知療法は、ものの見方や受け止め方を変えようとする治療です。嫌なことを言われても実は悪気がないだとか、言い方が悪いだけだとか思えるように仕向けていく治療なので、そんなに簡単にいかないと思われるかもしれません。

一つやってほしいのは、相手が嫌なことを言う場合、あなたを嫌っている可能性は100%ではなく、ほかの可能性もゼロではないと考える思考習慣です。人間の腹の中は本当のところはわからないし、わかっていると思っているとすれば、それはおごりなのだと思うことです。私のような精神科医を40年近く続けている人間でも、患者さんの気持ちが本当の意味でわかるようになるのに何年もかかることは珍しくありません。プロでない人があれこれ気にしても、本当のことはわからないと思います。

また、認知療法のようにプロのカウンセラーでなくても、話を聞いてもらうだけでかなり楽になることは珍しくありません。「それは考え過ぎだよ」と言ってもらえると、ほっとできるのではないでしょうか。あなたの話を聞いてくれる相手に、あるいは夫や子どもに話してみることで楽になるかもしれません。

嫌なことを言う相手が決まっているなら、それとなく避けるのも精神科医がときどきするアドバイスです。逃げることは決して悪いことではなく、メンタルヘルスには大切なことです。こういうテクニックをいくつか試していると楽になれるはずなので、順番にやってみてください。

◆略歴
和田秀樹 こころと体のクリニック院長。1960年、大阪府出身。著書に、ベストセラーとなった『80歳の壁』のほか『オレサマのトリセツ』など。

2025/09/19(金)東京新聞情報面メトロポリタン+プラス

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