2025/09/09 朝日新聞地域総合面「感動こそ『学びたい』気持ちの根源」清水先生のわくわく勉強法「野外上映 忘れられない記憶に」
みなさんは野外で映画を見たことがありますか。映画館でも自宅でもなく、空の下。僕はこの夏、初めて体験しました。教育効果も高いと感じたので共有します。場所は、フジテレビの近くのお台場海浜公園。無料で参加できる野外上映イベント「PARKCINEMAFESTIVAL」です。海とレインポーブリッジを背景に
した砂浜の上で特設スクリーンが迎えてくれました。僕はトークショーに登壇した後、お客さんに交じって「ちびまる子ちゃん」傑作選を見させてもらいました。ふと周りを見渡すと、見たことのない光景が広がっていました。家族がレジャーシートに寝そべっていたり、カップルが階段でくつろいでいたり。赤ちゃんからシニアまで集まった500人がそれぞれ自然体でスクリーンを眺めていました。僕も映画館にはよく行きますが、思えば映画館って見る姿勢が決まっていて、出入りもしにくく、子連れにはハードルが高くなりがちです。今回は「野外」という開放感が私たちに与える影響を目の当たりにしました。500通りのくつろぎの総和でリビング以上に落ち曽く空間ができあがり、作品の世界観に安心して入りやすくなっていました。この入りやすさが「鍵」だと感じました。どういうことか。教育心理学の見地から考えると、意欲の根源は感動です。感動して心が動くことで次への行動につながります。「何かを始めたい・学びたい」気持ちが生まれやすくなるのです。また、人は知識として習ってもなかなか覚えられませんが、このような経験に関する記憶は残りやすくなります。これをエピソード記憶といいます。海風を感じる非日常体験は、参加者にとって忘れられない記憶となったことでしょう。帰り際、「こんな経験を多くの方にしてほしいな」とぽんやり考えていました。でも、いまはスマホやタブレットで国内外の映像作品を見ることができますよね。どこか好きなロケーションで誰かと一緒に見て、話し、それについて語り合う。景色の記憶と重なって、忘れられない思い出になるはずです。