2025/08/30 東京新聞読書面週替わり企画、私の愛読書●君たちはどう生きるか、ジャーナリスト・角川武蔵野ミュージアム館長 池上彰さん(75)

「読むたびに発見がある」私は本が大好きで、NHKをやめてフリージャーナリストになったのも本を書きたかったからです。「本が本業」なのです。「君たちはどう生きるか」を読んだのは小学6年生のころでした。父親が口ってきて、最初は「親から言われて読むなんて」と反発したのですが、読み始めたら夢中でした。馨は戦前の1937年で、主人公のコベル君は旧制中学の2年生。コペル君は「いじめにあったら皆で助け合おう」と言っていたのに、結果的に仲間を裏切ってしまったことを気に病み寝込んでしまう。私も読みながら「自分もそうなるかも」と自分ごとのように悩みました。吉野源三郎は戦後、岩波書店の「世界」の初代編集長になる人で、この本は編集者時代に書いた子どもたちのための哲学書です。この本には仕掛けがあります。それは大人になっても読むたびに発見があるということ。コベル君というあだ名の基となったコペルニクスの考え方、歴史の多様な見方…。古典の素晴らしさです。慢画版も出て人気ですね。
戦後80年、この本は戟争と平和も考えさせてくれます。言論が自由ではなかった戦時下、吉野はわかりやすい文章に反戟の意識を込めました。今の課閣は戟争の悲惨さを実際に知る人が少なくなること。そこに小説などフィクションからも後世の者が学んでいく意味があります。想像力は大事です。中東問閣を考
える時、かつてユダヤ人の少女が『アンネの日記』を書いたように、今はパレスチナの少年少女が日記をつけているのでは、とも思います。年間300冊読んだ時期もありますが、今は執筆に追われそんなに読めません。でも、きのうも東京科学大の教え子たちとの読書会を楽しみました。(聞き手・増田恵美子)

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