賃貸の家賃 都市部で急上昇 「値上げ通告 対処の仕方は」 2025年10月30日(木)東京新聞朝刊暮らし面家計

 日本では上がりにくいと言われてきた賃貸物件の家賃が、関東や関西の都市部を中心に顕著に上昇している。東京都内では更新などを機に、今住んでいる物件の大幅な値上げを貸主から伝えられる事例も。借り主は値上げを通告されたら、どうすればいいのか。賃貸物件のトラブルに詳しい弁護士の上原幹男さんに対処法を聞いた。(木村留美)
 「一方的に現在の倍以上の賃料値上げを要求されているが、応じなければならないのか」「貸主から『今回の賃料見直しに応じなければ、契約の更新をしない』と言われている」。こうした相談が、家賃の値上げなどのトラブルに対する相談を受け付ける都の「賃貸ホットライン」(電03〈5320〉4958)に寄せられている。都不動産業課の担当者によると、相談件数は「2024年度後半から増えている」といい、中には「法外な値上げを通告されている事例もある」という。

正当性がポイント 根拠の提示求め交渉を

 値上げの通知が来た場合、借り主はどうしたらよいのか。値上げは貸主と借り主双方の合意が必要で、一方的にはできないため、上原さんは「借り主が応じるかどうかの判断は正当性がポイントになる」と話す。具体的には▽土地・建物に対する税などの負担の増加▽土地や建物の価格上昇を含む経済事情の変動▽近隣の同じような物件(築年数、広さ、立地など)の家賃よりも安いか-を考慮する。
 これらの項目は、借地借家法32条1項に定められている。値上げ額について納得がいかない場合は、固定資産税がいくら上がっているのかなど、オーナー側が持っている資料を出してもらい、根拠を示してもらうとよい」と上原さんは助言する。その上で、値上げ幅を抑えてもらえないか、交渉することもできる。
 折り合えず、納得できない場合は拒否や無視もできるが、貸主が訴訟に踏み切る恐れがあるため、注意が必要だ。訴訟を弁護士に依頼すると、数十万円単位の費用がかかることもある。貸主の主張が正当と認められれば、増額分に年1割の利息を上乗せしてまとめて支払うことに。「コストを考えれば、訴訟をするより値上げを受け入れた方がよくなってしまう」(上原さん)。ため、妥協点を見いだせるかが重要になりそうだ。

物価高、都心回帰…東京23区で最高値

不動産情報サービス「アットホーム」によると、9月の東京23区の賃貸マンションの平均募集家賃は単身者向き(30平方㍍以下)、カップル向き(30~50平方㍍)、家族向き(50~70平方㍍)、大型家族向き(70平方㍍超)のすべての面積帯で、調査を開始した2015年1月以降の最高値となった。
平均募集家賃には賃料のほか、管理費や共益費なども含まれる。単身者向きは前年同月比10・7%増の10万4359円と、16カ月連続で上昇。カップル向きは同11・7%増の17万337円、家族向き同9・7%増の24万8032円だった。

持ち家志向 名古屋 まだら模様

 家賃が上がった理由として、新築物件については、物価高で土地代や資材費の値上がり、既存物件については光熱費や人件費などの管理費の上昇が挙げられている。新型コロナウイルス禍で広がったテレワークが解除され、出社の動きが戻っていることも、都心回帰を強め、需要を押し上げているという。
この調査を担った同社のグループ企業「アットホームラボ」(同)の盤前淳子さんは「家賃上昇で同じ物件に住み続ける人が増え、空き物件が出にくくなっている。需要の方が強い状態のため、高い家賃でも借り手がいる限り、上昇する。上がり方は今までより穏やかになるかもしれないが、値上がりはしばらく続くのではないか」と見通す。
 東京23区外や埼玉県、千葉県などでもすべての面積帯で、前年同月を上回っており、首都圏の上昇が鮮明になっている。札幌市や福岡市の伸びも顕著で、首都圏同様にすべての面積帯で前年同月を上回った。
 名古屋市ではカップル、家族向きがいずれも前年同月比0・8%増と上昇しており、まだら模様だ。一方、単身向きや大型家族向きは下落しており、まだら模様だ。盤前さんは「持ち家志向が強い地域ということなどが影響しているのではないか」と分析している。

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