eスポーツ授業 ワクワク横浜・みなと総合高 来春、企業監修の新課程

 横浜市は来春から、市立みなと総合高校(中区)で、eスポーツについて学ぶ授業を始める。部活や同好会ではなく、3年生が単位を得る形で、佐賀県立唐津青翔高校と並んで公立高校では全国初の試みという。

 eスポーツは、「コンピューターゲームの対戦競技のこと。世界的な大会も開かれ、国際オリンピック委員会(IOC)も大会を新設するなど、右肩上がりの産業だ。みなと総合高校の新設のカリキュラムでは、3年生の前期(4〜9月)の選択科目の授業で計35時間学ぶ。eスポーツの歴史や現状などの基礎知識を得た後、プレーヤーだけでなく、コーチらチームの様々な役割、プレー動画の配信や実況、大会運営など、様々な職種が広がる産業の全体像の理解も深める。業界のトレンド分析なども行い、最後は班ごとにイベントを企画・運営する。同校は生徒の関心が高い分野の授業を模索してきた。

「好きを突き詰めた先にある学び」

 昨年、eスポーツ同好会が立ち上がるなどし、学校側が成長分野として注目した。津田武校長(60)は、「単なるゲームではなく、年齢や障害、国籍などにかかわらずコミュニケーションできる手段。「好きなことを突き詰めた先にある学び」を生徒たちに提供し、職業選択の可能性も広げたい」と意気込む。eスポーツの振興に取り組む市も協力。トッププロチームを運営する企業の監修を受けてカリキュラムを作り、最新鋭モニターなどの寄贈も受け準備を進める。

 協力した国内屈指の強豪チーム「VARREL」を運営する「CELLORB」(同市)の武笠慈栄さん(26)によると、プロゲーマーを目指し個人が競い合う内容ではなく、チームで協力しデジタル能力や課題解決型の思考が身につくカリキュラムにしたという。「優れたチームは壁にぶつかれば課題を整理し、いったん立ち止まって見つめ直し、PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを体感できる」と話す。また、「誰にでも開かれた公立校で、新しい価値を提供できる」と説明する。あわせて、eスポーツを楽しむ前提として、ゲーム依存を防ぐためのルールなども身につけてもらう。8月には、来春を見据えてソニーマーケティング(東京)から最新鋭のモニターとヘッドセットが同校に寄贈され。同好会から昇格したeスポーツ部で使っている。部長の山田天翔さん(3年)は「eスポーツは初期費用が関門で、機材がそろうと始めやすい」と歓迎。小学生からゲームに親しみ、中学以降はチームプレーを通じ多くの仲間を得たという。授業が始まるのは自身の卒業後だが「きっかけがなかった人にも楽しさを知ってもらえると思うと、ワクワクします」と話す。(足立朋子)

🔑eスポーツ

インターネットの普及及でオンラインでの対戦が世界中で楽しめるようになり、リアルタイムで競技を視聴するファンも増えている。「日本eスポーツ白書2024」(角川アスキー総合研究所)によると、国内でも市場は年々伸びており、23年は前年比117%の約147億。
動画視聴などを含めたファン数は856万人、25年には1千万人を超えると推定されている。IOCが新設する「オリンピック・eスポーツ・ゲームズ」の初回も27年に開かれる予定だ。

2025年10月16日(木)朝日新聞朝刊神奈川面

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