岡崎 勝 子どもってワケわからん 「変わる気持ちの伝え方」デジタル化で幼稚に?
 泣きながら放課後やってきた稔君。帽子を学校に忘れ、お母さんに「取りに行ってきなさい」と言われたのです。担任は一緒に教室まで行って、机の中にあった帽子を持たせて帰らせました。担任が電話をして「今、持ち帰らせましたので、よろしく」と言うと保護者は「はい、わかりました」と答え、「ありがとうございました」という言葉もありません。
 私は、墨や絵の具で汚した子どもの服を簡単に洗うことが時々ありますが、最近は「お世話になりました」とか「ありがとうございました」という親からのレスポンスはほとんどありません。
 感謝されたいがためにやっているわけではありませんが、社会的儀礼としての常識的レスポンスが消滅したのでしょうか。メールや交流サイト(SNS)ならば、さしずめ感謝のスタンプでハイ終わり!というところなのでしょう。
 連絡帳や手紙で、お礼や感謝を伝える文章自体が書けなくなっているとは思いたくありませ ん。それとも、「めんどくさっ!」「コストパフォーマンスがわるいよ」ということなのでし ようか?
 一方で、保護者や同僚に、明 確な文章や言葉で、連絡や意見 を伝えることができない教員が いないわけではありません。
 デジタル化やインターネット の普及はコミュニケーション を大きく、しかも、根本的に変 えつつあるようです。それは、 進歩・改良・改善というより も、浅薄で無思慮な関係しかつ くれない「幼稚なやりとり」に 劣化しているのかもしれませ ん。
 それとも、「そんな常識や形式 にこだわるようなことは断固拒 否する」という意志の強い人間 が増えただけなのでしょうか。
(小学校教員、育児雑誌編集者)
2025年10月15日(水)東京新聞朝刊暮らし面生活
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