規格外野菜 活用広がる 味・栄養は同じでお買い得 専門店や社員食堂で 2025年10月9日(木)東京新聞朝刊暮らし面 家計
長引いた猛暑で、今夏はトマトやキュウリなど夏野菜の価格が高騰しただけでなく、サイズや見た目が出荷の基準を満たさず「規格外」となった野菜が大量に廃棄された。味や栄養は変わらず、問題なく食べられる上、物価高の中、お買い得で財布に優しい。これらの農作物を積極的に活用する企業などの動きが、収穫量の減少に悩む生産者の助けにもなると注目を集めている。(中根真依)
9月上旬、愛知県小牧市の青果店「ベジブル小牧店」には、開店前から50人ほどが並んだ。お目当ては、200円で詰め放題のニンジン、2束100円のネギなど、格安の野菜や果物だ。値札には「キズ」「黒ずみ」と書かれている。「傷んだ部分を切り落とせばおいしく食べられる。この価格はありがたい」。0歳の次男と訪れた市内の女性(35)は品定めに余念がない。「パプリカなど普段は割高で手を出せない野菜が安く買え、料理の幅が広がる」と満足そうだ。
同店は、傷や色落ちで規格外となった農作物を生産者や市場から買い取って販売する「訳あり専門」だ。運営会社「ベジブル」社長の堀内賢さん(45)は2020年、新型コロナウイルス禍による一斉休校で給食の食材が廃棄されると知り、食品ロスをなくそうと事業を始めた。現在は愛知県内で3店舗に拡大。専務で仕入れを担当する川村高弘さん(44)によると「出荷できない野菜を引き取って」といった生産者からの依頼が増えている。
大雨や猛暑… 生産者支援
同社と昨年から取引をする愛知県扶桑町の農業法人「扶桑農産」は今夏、大雨と猛暑で、収穫を控えたタマネギが腐り、すべて廃棄した。近年、こうした事例が続いており、社長の小川泰央さん(43)は「品種改良が追いつかないほどの気候変動。適応できず失敗することが増えた」と語る。そんな中、ベジブルに黒ずみがあるダイコンなどを買い取ってもらえ、助かったという。「規格外でも思いを込めて作った野菜であることは同じ。消費者に届けてもらえてありがたい」
首都圏で社員食堂を運営する「ノンピ」(東京)は今年、運営する社員食堂の一部で、規格外野菜を具材にした「食べる野菜スープ」の提供を開始。食品宅配の「オイシックス・ラ・大地(一同)と開発し、スープに入る7種類の野菜のうち、1種類以上を規格外に。今の時期は、猛暑で育ち過ぎて市場に出回らないニンジンやナスを活用する。
ノンピの広報担当者は「スープに入れると見た目は問題なくなる。規格外野菜を取り入れることで、原価の調整もしやすい」と話す。
気候変動で生産者アンケート「収穫量減った」「規格外増えた」
農作物を生産者から直接購入できる通販サイト「食べチョク」を運営する「ビビッドガーデン」(東京)は6月、気候変動に関するアンケートを実施し、登録する生産者331人が回答。「気候や環境の変化を感じるか」との質問に、「強く感じる」「感じる」とした人は98.5%に上った。複数回答で影響を聞いた項目では、「収穫量、漁獲量の減少」が最多の58%、「規格外品の増加」が29.6%。6割以上が品種変更や栽培時期をずらすなどの対策に取り組んでいた。サイト内に規格外品だけを集めた特設ページを作り、出品者の声を紹介。担当者は「規格外は味が落ちると思っている人もいる。正しい認識を広め、農家を応援したい」と話す。
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