人生相談 本日の回答者 来馬 明規(くるま あきのり)巣鴨・高岩寺住職、医師 2025年10月3日(金)東京新聞朝刊情報面 メトロポリタン+プラス
悩み・質問
禁酒で快調 でもつまらない
最近、健康について考えるようになり、試しにお酒を3、4カ月飲まない生活をしてみたら体の調子が良くなりました。体に合わないと気づいたので、お酒をやめようと思います。
また、友達がいないことも悩みです。家と会社を往復するだけの日々で、毎日疲れ果てています。土日は体力を温存して月曜に備えるだけの休日。つまらない人生だと思います。もう少し刺激になるようなことがあれば良いのですが。
回答
尊い努力 心にも栄養を
あなたはご自身の力で、健康の大切さに気づき、3、4カ月の禁酒に成功されているのですね。しかも体調改善の自覚が禁酒継続の動機づけになっています。ここに至るまでの気づきと努力はとても尊いものです。「つまらない人生」などと自分を責めておられるようですが、心の回復が体に比べて少々遅れているだけであり、専門家の適切な介入と支援で復調できるはずです。
今はアルコールを断ち体調は良くなったはずなのに、平日は疲れ果て、休日はむなしく過ぎるだけ。あなたはそんなギャップに戸惑っておられるようですね。
まずは地域の精神保健福祉センターや保健所の電話相談を活用して専門の医療機関を受診し、疲れやすさの原因を精査することをお勧めします。診察や血液検査などで、肝障害やビタミン・ミネラル不足などの有無を確認してもらうとよいでしょう。
身体に問題がなければ、アルコール依存からの回復過程でよくみられる、離脱(禁断)症状や気分の落ち込みかもしれません。自然回復もありますが、服薬治療が行なわれることもあります。多くは外来通院で対応可能で、健康保険や自立支援医療制度を利用すれば、自己負担が軽くなります。
今の心の状態は「長年摂取していたものが実は毒だと気づいてやめたものの、空腹といった感覚に近いかもしれません。何でも摂ればいい、かわからない」ですが、心に栄養を与える方法は、専門家が一緒に探してくれます。
心理療法やカウンセリング、さらに断酒会などの支援グループでは、苦しみを分かち合える「同志」との交友も生まれます。
週末には散歩や読書、昔親しんだ趣味の再開もよいかもしれません。行政主催の無料のイベントなども気軽に楽しめる機会になるでしょう。
強い刺激を求めなくても、身と心が回復するにつれて、人生の風景が徐々に変わっていくはずです。あなたがさらに元気になれることを、心から応援しています。
◆1963年、東京都出身。2005年から、とげぬき地蔵尊高岩寺(豊島区)住職。内科・循環器専門医で、禁煙推進と救急救命法普及を実践する自称「医僧」。
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