秋刀魚 油焼き ふっくら香ばしく 食の職人
わずかに先の季節を走るのが料理屋です。鮮度の証しである澄んだ目の秋刀魚をにらめっこして探すのは一段落しましたが、家のおかずには、いまが旬。わたしの焼き方をお話ししましょう。
最近は、油焼きにしています。理想の加減は水分を逃がさずに身はふっくら、皮は香ばしく。意外と繊細な仕事で、表面を引き締めるほどの塩を振って少し置きます。水分が出ていれば押さえ、全体に小麦粉をまぶします。切り口はふたをするように厚めに、あとは粉をはたいて薄く。フライパンを熱くして油を少々、秋刀魚を盛り付けた時の表側から焼きます。色がついたら魚を返し、ぴったりふたをします。蒸気は逃げず、熱もよく回ります。
中火を保ち、切り口の骨が飛び出てきたら、火は通っています。ふたを取り、うまみの溶け出た油をさじで上から何度かかけて仕上げます。熱々に大根おろし、二杯酢で染めれば「ああ、うまい」。説明はいらないですね。
京都の「御料理はやし」主人の林亘さんに話を聞きます。(構成・長沢美津子)
2025/09/19(金)朝日新聞朝刊くらし面
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