2025/09/14 神奈川新聞社会面「独日夫婦 浦賀に『広場』開設」DYIで笑顔広がれ

国際結婚した夫婦がDIYで「開国の地」を明るくしようと奮闘している。オンライン英会話スクール運営のドイツ人のケン・ランテクティーさん(44)と日本人の兼行真弓さん(47)は、生活を送る横須賀市浦賀丘でコミュニティーガーデンを開設し、地域住民が使用する階段も修繕した。ケンさんは「近隣の方々が喜んでくれることがとにかく幸せ」と笑顔の輪を広げている。(矢部 真太)

■「憩いの場」

コミュニティーガーデンは2人の自宅裏に広がっている。ドイツ語で「太陽の広場」という意味で「ゾネンプラッツ」と名付けた。約300平方メートルの傾斜地にはベンチ付きのウッドデッキや家庭菜園が可能なスペースが設けられている。
この場所はもともと私有地の空き地だった。自転車やごみなどが不法投棄され、地域の悩みとなっていた。そこで2人は2022年に土地を購入し、草木を刈って整備。野菜を育てたり、花壇にしたり、地域の誰もが無料で自由に利用できる場所として開放している。
夏はキュウリやトマト、冬にはサツマイモなどの野菜を栽培し、地域住民と自然の恵みを共有し合える関係も築いた。気温が涼しい夕方には高齢者が散歩で訪れ、学校帰りの子どもたちが立ち寄る。にぎやかな声にケンさんは自ら耳を傾ける。「憩いの場が作りたかった」という思いが形になった。

住民の安全へ階段も修繕

ミュージシャンのケンさん、歌手だった兼行さんはコロナ禍を転機に5年前に浦賀地区へ移住。それまで米ロサンゼルスやドイツなどを転々としたが、兼行さんの両親が同地区に暮らしていたことで縁があった。ロサンゼルス時代はまさに資本主義の波にのまれる感覚だったという。「身近な人と会話をしていても利益があるかどうかで判断される搾取の文化が息苦しかった」と兼行さん。ケンさんの地元、ドイツ中部ロッテンブルクのように程よい田舎暮らしができる浦賀は静かで心地よかった。

■ハーモニー

DIY好きが高じ、今度は階段の修理にも取り組んだ。移住以来、自宅横にある階段の老朽化が悩みだった。地域住民にとって欠かせないものだったが、コンクリート舗装はぼろぼろで、通行人の転倒が起きることも。津波など有事の際に安心して利用できる避難経路にする必要もあった。
年には市土木用地課に相談したが、私有地で行政が手を加えるのは難しいと判断された。そこで、自ら手を動かし始めた。セメントを3トン購入し、今年5月に工事を開始。舗装を全て剝がし、打設工事に取り組み3カ月かけて完成させた。お礼や激励の手紙とともにカンパ約20万円も集まった。地域の人々のエールが何よりも力になっている。
移住当初はケンさんが自宅屋根でDIY作業に取り組む様子もあり、「不審者」に思われたこともあった。兼行さんは「外国人というだけでひとくくりにしてほしくない。地域に貢献していることも知ってもらえればうれしい」と話す。
今では、近隣住民と野菜やおかずなどをお裾分けしたり、食事など交流したりする機会も増えた。隣人との関わり合いを大切にするからこそケンさんは思いを語る。「地域の皆さんの笑顔はお金では買えない。ハーモニーを感じる日々を過ごせているし、この日常を大切にしていきたい」

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