2025/08/29 東京新聞朝刊暮らし面「広がる『保険外』介護サービス、利用者のニーズ幅広く対応」
高齢者らの在宅生活をサポートする「介護保険外サービス」の利用が広がっている。公的な介護保険の枠にとらわれず、家事代行や外出支援、配食など多
様なニーズに対応。今年2月には民問事業者でつくる「介護関連サーピス事業協会」が発足し、利用者や家族が安心してサーピスを選べるよう、近く認証制
度をスタートさせる計画だ。( 川合珀子)
「入院の支度もしましょうか」。そうヘルパーが声を掛けると、町工場を切り盛りしながら要介護2の夫(69)を世話する女性(64)11東京都大田区11が、ほっとした表情を浮かべた。介護保険で訪問行護などの在宅サービスを利用するが、同居家族がいる場合は原則、身の回りの生活援助を受けられない。当初は病院の付き添いや食事の準備などを1人でこなしていたものの、「肉体的にも精神的にも回らなくなった」。担当のケアマネジャーに相談して紹介されたのが、東京や愛知などで介護保険外の訪問介護サービスを提供する「イチロウ」だ。1時閻あたり約3千円(交通費別途)で、週2日、午前中に2時問ずつ利用。洗濯や掃除、買い物代行を基本に、日によって衣替えやベランダの片付け、病院への移動や待ち時間の付き添いを頼む。7月中旬は急きょ決まった一時入院の支度
も。「臨機応変に助けてもらえるから仕事も続けられる」
● 全額自費だが多彩
介護保険制度では、要介護度に応じて受けられるサーピ
スの限度額が決まっている。その枠内なら原則1割の自己担で済むが、内容や時問などが限られる。一方で保険外サービスは近年、民問事業者参入で美容院や趣味のため外出支援、認知症の見守り、食事の宅配など多彩に。介全額自費だが、高齢者らの生活の質の向上や、家族の負担軽減にもつながっている。がただ事業者によって費用やサービスの質がまちまちで、利用しにくい点も。名古屋市熱田区で狂らす母(77)の介護に関わる女性(47)は「どの事業者が信頼できるのか分からず、だまされないかと不安がある」と明かす。ケアマネから十分な情報を困られず、自分でインターネット検索して見つけた業者に問い合わせた際は返事すら来なかった経験も。「もっと安心して使えるようになってほしい」介護関連サーピス事業協会は、イチロウやワタミなど保険外サーピスを手がける民問10社で発足。入会申し込みは、地方の中小企業や団体も含め80事業者を超える。まず2025年度は、生活支援や配食の分野で、利用料の明示や苦
情対応窓口の設四など一定の基準を満たした事業者に認証を付与し、ホームページ上で公開する。今後は、訪問理笑容や外出支援の移送サービスなどに対象を広げる計画だ。
● 仕事との両立支援
経済産業省によると、働きながら家族を介護するワーキングケアラー(ピジネスケアラー)は高齢化とともに増加し、将来推計では30年に318万人に。介護離職を防ぐ意味でも、公的な介護保険を補完する保険外サーピスの役割は培している。日本総研の紀伊信之リサーチ・コンサルティング部門高齢社会イノペーショングループ部長は、課迎として儒頼できる民問サーピスの周知だけでなく、利用者や家族の費用負担についても指摘。「例えば勤務先の企業が仕事と介護の両立支援として、保険外サービス費用の一部を補助するような取り組みも考えていくべきだ」と述べている。